皆さんも一度は聞いた事があると思いますが、「地球の肺」と呼ばれる熱帯雨林はこの瞬間にも失われています。推定で約80エーカー(1エーカーは4046.8平方メートル)の熱帯雨林が1分毎に消滅しています。以前、地球上の14%の大地は熱帯雨林でした。現在では6%ほどしか残っていません(それ以下かもしれません)。特に東南アジア(フィリピン、インドネシア)、南米(ブラジル)の熱帯雨林の減少は深刻です。あの広大なアマゾンでさえも、いつかは広大ではなくなってしまいます。

 

  熱帯雨林の減少は様々な問題を引き起こします。まず、地球上の生物の50%以上は熱帯雨林に生息しています。その存続が懸念されている生き物は数え切れません。世界で一番美しいと言われている鳥、ケツァールも然りです(正確には熱帯雲霧林に生息していますが)。また、世界の気候の変化(温暖効果)、洪水問題、土砂崩れなどの問題もあります。さらに、薬品の原料の多くは熱帯雨林から来ています。熱帯雨林に住む原住民の生活さえも奪われていきます。

 

  伐採の理由には農業や牧畜業があります。熱帯雨林近辺で暮らしている人々の多くは貧しく、土地を買って農業をする事ができません。そのため、熱帯雨林の木を切り倒して農地にしています。残念ながら、熱帯雨林の土壌は栄養分が少ないので、長期間作物を育てるのに適していません。そこで、彼らはまた他の場所の木を切り倒さなければなりません。牧畜も同様です。また、建築、家具、パルプなどに利用されるための伐採も後を絶ちません。残念ながら我々、日本人はこのエリアに不名誉な貢献をしています。

 

  石油会社の中には原住民を賄賂や巧妙な手口で騙し、土地の権利を奪ってしまうケースもあるそうです。北米で観察される渡り鳥の大半は、中南米の熱帯雨林で冬を過ごします。ご存知のように日本の渡り鳥も東南アジアなどで越冬しています。残念ながら北米に渡って来るアメリカムシクイの数は、年々減少しています。低地の熱帯雨林以外にも熱帯乾燥林、熱帯雲霧林、湿地帯、マングローブ林が年々減少しており、野鳥の生息地はこの瞬間にも失われています。

 

 

ケツァールの美しい姿もいずれは幻となる?

 

 

私の人生観を変えたコンゴウインコも森林伐採、密猟により個体数が著しく減少した。

 

 

「世界最強の猛禽」オウギワシも推定300羽しか残っていないそうだ。

 

  この事態を改善するため、私達には何ができるのでしょうか?近年、中米の小国コスタリカがエコツーリズム先進国として脚光を浴びています。自然や生き物を愛する人達は失われていく熱帯雨林の重要さに気付きました。欧米の自然団体は貧しい地元民にその重要さを訴えました。伐採ではなく、熱帯雨林を保存、または維持する事によって利益をもたらす方法です。こうして、コスタリカの観光業は瞬く間に国の支えとなりました。勿論、その成功は多くの観光者が来なければ成り立ちません。私達が熱帯雨林を有する国を訪れるだけでも、間接的に熱帯雨林の保護に繋がっているのです。

 

  例えば、中南米の有名なエコ・ロッジ(ホテル)の多くは収益の一部を森林保護に使用しています。南米のエクアドルも世界トップ・レベルの野鳥天国として有名ですが、現在、自然団体の願いも空しく、政府が着々と北西部にオイル・ラインの建設を進めています。この地域には約50種の固有種が生息しています。もし、この国でもエコツーリズムがコスタリカのように盛んになれば、エクアドル政府もその価値を認めるかもしれません。

 

  私が野鳥ガイドを目指した理由は、単に鳥が好きだからだけではありません。初めて熱帯雨林を訪れた時、このような美しい場所が地球上に存在するのかと驚きました。かの有名なチャールズ・ダーウィンも全く同じ考えだったそうです。そして熱帯雨林の減少を知りました。

 

 自分には何ができるのだろう?私一人では何もできません。ですが、野鳥好き、自然好きの人達が熱帯雨林を訪れ、私のようにその美しさに感動したのなら・・・・その人達がまた他の人達にその素晴らしい体験を伝え、また別の人達が熱帯雨林に行って・・・・こうして、一人でも多くの人達が訪れてくれれば・・・・と思いました。長々と書きましたが、我々の身近にいる鳥達も身近な存在でなくなる日が来るかもしれません。そうならないためにも、私は私なりにできる事をしていこうと考えています。

 

悲しいエピソード

 

  以前、コスタリカ人の男性に知り合い、「ヒワコンゴウインコが私の土地で観察できるよ。」と言われ、喜んで訪問しました。しかし、彼の家族を取り巻くのは悲しい現実でした。とても人が住めないようなドアも窓も無い小屋で、子供8人を含む10人が暮らしており、小屋の外に木材が積まれていました。彼の敷地には原生林が広がっており、その木を伐採して小屋の柵や家畜小屋を作っているのです。彼は熱帯雨林の保護が大切な事を知っていました。しかし彼は「このまま木を残しておいても、一銭にもならないし・・・・家畜は生きていく為には欠かせないから・・・・」と言いました。

  私は彼の敷地内の雨林がヒワコンゴウインコにとってどれだけ大切かを説明しました。なにせコスタリカ国内の営巣ペア数は3035ほどなのです。
国内での絶滅はもう避けられないかもしれません。

 
彼の家を去る時、隣人の敷地内からもチェインソーの音が響いていました。自然保護の大切さを分っているが、生きる為に伐採しなければならない地元の人達。ヒワコンゴウインコが絶滅しても彼らは生活に困る訳ではない。地元民にとっては、個体数が減っているから保護するでは説得力に欠けてしまいます。人間と他の生物の共存のテーマは非常に難しいです。ですが、私は国土の約4分の1を国立公園や自然保護区に指定し、エコツーリズムのモデル国として頑張っているコスタリカのような国が存在する事を誇りに思います。

 

 

この美しき緑よ、永遠に・・・・。

 

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