ヒワコンゴウインコを救え

 

 

 Resplendent Quetzal(ケツァール)と共にScarlet Macaw(コンゴウインコ)は、コスタリカを代表する美しい野鳥である。青空の下を自由に飛ぶ姿は感動すら覚える。私も初めてコスタリカでその姿を見た時は、体中に衝撃が走った。それまでコンゴウインコは私にとって動物園やペット・ショップで見かける鳥でしかなかった。

 

  帰国後、色々調べてみると、コンゴウインコの個体数減少、失われていく熱帯雨林の現状を知った。以来、「自然保護」の重要性を感じるようになった。コンゴウインコの「真の姿」を見て思った。「大空を羽ばたくコンゴウインコを檻(鳥篭)に閉じ込めたり、ペットとして飼うのは正しい選択なのか?全ての生き物は自然の中で見るのが一番美しい。」コンゴウインコは国内で絶滅危惧種であり、カララ国立公園とコルコバード国立公園が最後のオアシスとなっている。

 コスタリカにはコンゴウインコの他にGreat Green Macaw(ヒワコンゴウインコ)も存在する。コンゴウインコ同様の美しさにもかかわらず、バーダーや観光客がこの鳥の美しさを拝める機会は少ない。なぜなら、ヒワコンゴウインコの個体数はコンゴウインコのそれより遥かに少ないからである。

 1998年には500羽を越えていたにもかかわらず、2000年には200羽ほどに減ってしまった。減少は更に加速し、現在での国内繁殖ペアは約3035と言われている。個体数の減少理由はお決まりのパターンで、熱帯雨林の伐採と密猟(ペット用)に起因している。特にDipteryx panamensisと呼ばれるアーモンドの木が種の存続に不可欠なのであるが、我々にとっても非常に利用価値が高い木であるため、その多くが切り倒されてしまった。

 この深刻な状況はコスタリカだけではなく、中南米全体でもヒワコンゴウインコの絶滅が懸念されている。幸い、この美しい鳥の存続に日々を費やす生物学者、ボランティア、団体が存在する。コスタリカで設立された非営利団体、Friends of the Great Green Macaw(通称FGGM) http://www.greatgreenmacaw.org/ はヒワコンゴウインコが営巣する木を地元民の協力を得て保護しようとしている。

 FGGMはヒワコンゴウインコの保護だけを目的にしている訳ではない。僅かに残された生息地(10%足らず)を保護する事は、同エリア(コスタリカ北部及び北東部、カリブ海側の低地熱帯雨林)に生息する数多くの生き物(絶滅危惧種のジャガー、バクなど)の保護にも繋がる。野鳥に関しても同様で、国内で観察できる半数以上の種類がこの地域に生息している。

 また、現在、FGGMを含む多くの国内自然団体が壮大なプロジェクト「San Juan-La Selva Biological Corridor」に取り組んでいる。ニカラグアとの国境地帯とラ・セルバ熱帯研究所内の森林を繋ぎ、より「大きな森」にするのが狙いである。小さい森林が散在していても繋がっていなければ、大型の哺乳類や他の生き物が生存するのは難しい。事実、ジャガーやHarpy Eagle(オオギワシ)などをコスタリカで観察できるチャンスはほとんど無い(中南米全体で共通)。必要とするテリトリーは我々の想像を遥かに越える広大さだ。

  現在、同国内では、唯一コルコバード国立公園のみが大型哺乳類やオウギワシの最後の砦と推測されている。同国立公園に匹敵する広大なエリアの保護が、コスタリカ北部、北東部にも必要なのは一目瞭然である。また、「San Juan-La Selva Biological Corridor」の核をなすエリアを第29番目の国立公園に指定し、保護する計画も進行中である(Maquenque国立公園)。このエリアはヒワコンゴウインコの存続に必要不可欠なDipteryx panamensisが最も集中している。この国立公園が一日も早く誕生し、ヒワコンゴウインコの保護に繋がる事を望んで止まない。

 つい最近(200411月)まではヒワコンゴウインコの飛翔姿しか見た事がなかった。絶えず成熟したDipteryx panamensisの実を求め、北部、北東部を移動するこの鳥を確実に観察できる場所が分らなかったからだ。日中の暑い時間には山奥にいる事が多く、アクセスも困難であるため、撮影する機会すらなかった。

 しかし、この鳥の悲しい現状を皆さんに知ってもらうために、何としても撮影したかった。そこでヒワコンゴウインコが出没するエリアを訪れては、地元の人達から行動パターンや他の情報を集め続けた。ようやく撮影に成功したのだが、雨上がりで空が灰色だったのは残念だった。乾季には大多数がニカラグア国境へ移動し、繁殖に入る。そのエリアの方が撮影が容易なのではあるが、その前に撮影できてホッとしている(流石に国境まで6時間の旅は辛い)。

 私もようやくコスタリカでガイドとしてやって行く基盤ができたと思う。これからは少しずつ保護活動にも貢献できる様に頑張りたい。一人の力など限られているが、何もしないよりは遥かに良い。FGGMの協力を得て、募金を前提とした「ヒワコンゴウインコを救えツアー」がようやく実現した。今後も積極的に募金ツアーを企画したい。わずかに残されたDipteryx panamensisの保護が、ヒワコンゴウインコの存続に不可欠なのだ(毎年同じ木に営巣する傾向が非常に強い)。

募金で「購入保護」したDipteryx panamensis

募金者の名前が記載されたプレート

 この瞬間にもヒワコンゴウインコの数が一羽減っているのかも知れない。事実、このような現状下に於いても悲しい出来事は起こっている。以前、営巣しようとしていたペアが、ハンターに撃たれて死んでしまった報告がある。人間は自然や生き物に対して、どうしてここまで愚かになれるのだろう?

 しかし、悲しい出来事だけではない。昨今では1950年以来、北部から姿を消してしまったコンゴウインコが少数ではあるが、観察されるようになった。また、今年、ヒワコンゴウインコも一ヶ所で50羽以上が記録された日もある。つい最近、私自身も12羽の集団が青空を背に飛んでいるのを目撃した(過去最高)。以前、国内での絶滅は逃れられないと考えていた私ではあるが、明るい兆しが見え始めている。

 コスタリカの自然保護のシンボルとして頑張れ、ヒワコンゴウインコ!

 追記 

日本大使館公邸にて贈呈式の模様:撮影者 岡山市役所の国際課の課長様

 2005520082に日本野鳥の会岡山支部の皆さんをご案内させていたく機会に恵まれました。二度目のツアーの際には、副支部長のY氏とヒワコンゴウインコに関するお話もさせていただきました。そして、同氏の尽力により、営巣の木を「購入保護」していただくことになりました。

 岡山市とサンホセは姉妹都市となっており、その40周年を記念して訪問団がコスタリカへ、という絶妙のタイミングでした。募金をしたいただいたY氏、その知人(お二人様)、贈呈式に出席していただいた訪問団の皆様、感謝の気持ちで一杯です。本当にありがとうございました。これで国内に存在する約半分の営巣の木々は、「購入保護」されたことになります。

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