今週の野鳥(第448回)

 

Fiery-billed Aracari

(アカハシムナフチュウハシ)

     

        

 

 

 初めてコスタリカを訪問したのは、今から二十数年前のことだ。当時はロサンゼルスに住んでいたのだが、既にアメリカの温帯に生息する野鳥には魅力を感じず、心はここにあらず状態と言ってもいい程だった。それくらい熱帯エリアの野鳥は鮮やかで、私を魅了してやまない存在となっていた。訪問する前には図鑑を眺めては、あれもこれも見たい、と胸をときめかせたものだった。

 

ところが現実は私が描いた夢とは程遠く、当時の私には普通種でさえ見ることが難しかったのだ。土地感もなく、種ごとの細かいポイントさえ知らなかったのだから、ある意味で当たり前だったのだろう。この時、初めて熱帯エリアでの探鳥の難しさを痛感したのだった。今週紹介するFiery-billed Aracari(アカハシムナフチュウハシ)は、そんな私にとっては思い出深い鳥となっている。

 

全長43cmほどあり、コスタリカとパナマ西部にのみ生息している(チリキ固有種)。小集団で森林の上層部を移動していることが多いが、林縁やホテル、ロッジの庭園では目線近くまで降りて来ることもある。カリブ海側には、類似種であるムナフチュウハシが生息している。こちらは民家の庭などでも容易に観察できるが、アカハシムナフチュウハシの方は環境に敏感のように思える。とは言うものの、緑が少ない中央盆地帯の西部でも少数が生息しているので、それなりの順応性も兼ね備えているのであろう。

 

冒頭に話が戻るが、この鳥との初めての出会いは、旅のハイライトの一つであった。期待していた種が見れず、イライラが募っていた私にとって、「救いの存在」ともなった。私が夢に描いていた熱帯の鳥の典型とも言える外見であったし、最初に見たオオハシ類でもあった。この時の大切な思い出は今でも色褪せることはない。

 

今では野鳥図鑑の表紙絵を飾るようにもなり、訪問客の認識度も高まっているはずである。ちなみに英名のAracariは「アラカリ」ではなく、「アラサリ」と発音すべきなのだが、一部の野鳥ガイドでさえも前者で呼んでいるのが現状だ。

 

 また来週をお楽しみに。露木

  

                                                                          

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