今週の野鳥(第8回)

 

Resplendent Quetzal

(カザリキヌバネドリ)

 

 

 

  初めて見る鳥と出会った瞬間は、興奮して心臓がドキドキするものである。しかし、何度も何度も出会うと、その興奮度は少しずつ冷めていくものだ。しかし、そんな傾向が通用しない鳥がアメリカ大陸には存在する。何度見ても感動と興奮に溜め息が出る。今週は世界一美しいと呼び声が高いResplendent Quetzal(カザリキヌバネドリ、通称ケツァール)を紹介します。

 

 誰がそう決めたか定かではないが、少なくとも新大陸に生息する野鳥の中では最も美しいのではないだろうか?日本でもテレビや雑誌などで「幻の鳥」として紹介されている(らしい)。故・手塚治虫氏の作品「火の鳥」のモデルとも言われている。体長は約35cmであるが、尾のように長い飾り羽は65cmほどにもなる(注意:実際の尾は白い部分で短い。長い緑の部分は上尾筒が四本に別れ、伸びたものである)。体色はエメラルドグリーンに、ルビーのような深紅である。光の反射によってはエメラルドグリーンがターコイズ・ブルーに見える時もある。

 

 メキシコ南部からパナマ西部にかけて広く生息するが、一部の地域では熱帯雲霧林の減少などが原因で絶滅危惧もささやかれてもいる。現にグアテマラ(国鳥)ではごく少数しか残存していない。しかし、コスタリカ、パナマ、ホンジュラスでは保護区内にまだかなりの個体が生息しているようだ。

 

  「中米の楽園」、「中米のスイス」と呼ばれているコスタリカに毎年多くの自然愛好家やバーダーがこの鳥を一目見ようと訪れるのだが、落胆して帰国する人々も少なくない。なぜなら、ケツァールの生息地である熱帯雲霧林はしばしば深い霧に包まれ、茂みも深い。この鳥にとって格好のカモフラージュになるからだ。故に、容易に見過ごしてしまう。また、人の存在に気が付くと、目立つ深紅のお腹を隠すため、背中を向けてしまう。

 

 私は過去に多数のケツァールを見ているが、確かにしばらく観察していると、近くの木に飛び去って背中を向ける事が多かった。繁殖期になると求愛行為や巣作りに忙しくなるので、容易に観察できる。特に巣は地面から3-4m程の高さに作られる事もあり、ケツァールを目線で観れる贅沢も味わえる。

 

 コスタリカはこの鳥の価値を早くから見出し、自国のエコツーリズムの看板にしている。近年、隣国のパナマもコスタリカに追いつこうと盛んにエコツーリズムを推進している。一つ面白い話がある。パナマのある観光案内ではコスタリカに対抗して次のように宣伝していた。「コスタリカでは30人がケツァールを見に行っても 一羽見られるかどうかである。しかし、我が国パナマでは 一人がケツァールを見に行けば30 羽見る事が出来る。」なんとも凄い宣伝である(宣伝を信じないように)。

 

 いずれにしてもこの鳥には、これらの国のエコツーリズムを左右するほどの影響力がある。「幻の鳥」ケツァールは決して幻ではない(少なくとも私は数え切れないほど見ている)。少しの冒険心、知識、忍耐があれば、この鳥はかならず目の前に現れる。鳥好きでなくとも、一生忘れられない思い出となるだろう。

 

また来週をお楽しみに。露木

 

 

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